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医の倫理
医の倫理には大きく医療倫理・生命倫理・臨床倫理の3つがある。
医療倫理は医学の父と言われる紀元前4世紀古代ギリシャの『ヒポクラテスの誓い』から始まる。当時の医師の職業倫理でもあった医療倫理は長い時の経過とともに、20世紀の医学のさまざまな問題に対処できなくなってきた。また、意見の異なる人の間で共有可能で多種多様な倫理的問題に汎用可能な方法論が必要になってきた。そこで1979年に哲学者トム・L・ビーチャムと宗教学者ジェイムズ・F・チルドレスの共同にて以下の医療倫理の四原則が提唱された。
- 自律尊重
- 本人の主体的な意向を尊重する。自己決定権
- 与益(善行)
- 本人にとって最善のことを促進する。
- 無危害
- 患者さんに危害を及ぼさない。
- 正義
- 患者さんに公平・公正で対応する。限りある医療資源を適切に配分する。
また第二次世界大戦のナチスドイツの人体実験や戦争犯罪などの裁判を経て出された『ニュルンベルク綱領』では生命倫理が提唱されている。医学研究者の倫理ともいうべきものである。これは哲学・倫理学・宗教学・神学・法学・経済学・社会学・心理学・人類学など多分野の叡智を結集し学際的に検討されている。
また近年の医学や医療技術の急速な進展に伴って医療倫理や生命倫理だけではカバーしきれない問題が出てきた。脳死、臓器移植、体外受精、遺伝子組み換え、再生医療、延命治療、尊厳死等などである。これら諸問題に対処するために臨床倫理がある。いわば臨床の現場にいる医療関係者の倫理であり、医師のみならずすべての医療従事者に深く関わっている倫理である。
これら医の倫理を十分に理解した上で、当院では以下のような職業倫理と行動指針が定められており、倫理委員会を設置し臨床における様々な倫理的問題に対処している。
職業倫理
- 患者さんからの社会的・道義的な信頼を確保する。
- 最も望ましい医療サービスを提供できるように研鑽を積む。
- 患者さんの権利を守ることを常に意識する。
- 個人情報の保護や守秘義務に努める。
- 他の医療関係者の職責を理解・尊重し、協調に努める。
行動指針
- 医療倫理の四原則に基づいて行動する。
- 医療従事者としての尊厳と責任を自覚する。
- 患者さんの人格を尊重し、優しい心での対応と丁寧に説明する。
- 関係者と協力し、医療の公共性を重んじ、社会の発展に尽くす。
- 生涯学習の精神をもって知識と技術の向上に努める。
- 多職種との連携強化に努め、チームワークを大切にする。